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海域で問題となるセットダウン波として知られる2次入射波を含めた長周期変動波漂流力の荷役稼働への影響については検討されていないものと考えられる。そこで本論では係岸船舶の動揺に与える長周期変動波漂流力の影響について、荷役稼働率を用いて比較検討を行うことを第一の目的とする。さらに、船体の動揺に与える影響因子として岸壁反射率、難岸距離についても着目し、その影響について検討を行うことを第二の目的する。
2. 理論解析
本論においては、長周期変動波漂流力や係留系の復元力特性といった非線形問題も取り扱うため、時間領域の6自由度運動方程式による3次元非線形数値シミュレーションを用いた。本論で用いた座標系をFig.1に示す。

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Fig.1 Coordinate system

2−1運動方程式
時間領域の運動方程式は、固有周期に対応した同調現象も含め、時々刻々の流体力係数を選択できる次式で示される運動方程式を用いるものとする6)。流体力係数、波強制力については岸壁に鏡像の原理を応用した3次元特異点分布法により求めた7)。

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ここで、mij: 広義の付加質量、amij(∞): 周波数無限大での広義の付加質量、Kij: メモリー影響関数、NVij: 粘性減衰力係数、βWij: 波漂流減衰係数、Cij: 静的復元力係数、Gi:係留索及びフェンダーの係留力、Fi(1): 1次波強制力、Fi(2): 2次波強制力である。
2−2 波浪外力
1次波強制力、2次波強制力は波振幅ζ(t)とインパルス応答関数gi(1)(τ)、gi(2)(τn,τl)との畳み込み積分により以下のように表現できる。

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また、インパルス応答関数は周波数領域の1次、2次の伝達関数Hi(1)(ω)、Hi(2)(ωk-ωl)を用いて、以下のように表される。

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ここで、2次伝達関数功Hi(2)(ωk-ωl)は、浮体の1次運動をその平均位置周りで摂動展開し、瞬時の淡水面に働く流体圧を積分することにより以下のように求められる。

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ここで、ρ: 流体密度、ηR(1): 1次波面上昇量、φ(1): 1次の全速度ポテンシャル、X(1): 浮体上点の1次変位ベクトル、WL: 浮体水線、XG(1): 浮体重心の1次変位ベクトル、a(1): 1次変位角ベクトル、φ0(2): 2次養成分入射波ポテンシャルである。
2−3保留力
(1) 弛緩係留
係留索により係留された場合の係留力は、物体固定座標系上での各浮体側係留索取付点座標(x'pi,y'pi,z'pi)及び水平面内での各係留索取付角αi、を用いて以下のように表すことができる。

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ここで、水平張力THi及び鉛直張力TViは修正カテナリー理論を用いて求める8)。
(2) フェンダー保留フェンダーには定反カフェンダーを用いるとする。その係留力Giは、各フェンダーの圧縮量を便宜上xiとす

 

 

 

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